・・・ プロレタリア文学が、ソヴェトの生産経済計画と緊密に結合したと云っても、主としてそれは作品の主題、内容に表現されるだけだ。文学的生産は、やっぱり個人個人勝手に、すきな時、自分が発見した材料によって互に何の連絡も統制もなく書かれているだけ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・この人物が四十年のロシアの歴史の波と結びついている、その関係の受動性、謂わば無気力、或る面での歴史の波から個人的な穴の中への遊離は、私達に、作家とその日常生活とはかくも緊密なものであるという一箇の教訓として見える位です。一九三二年にモスクへ・・・ 宮本百合子 「長篇作家としてのマクシム・ゴーリキイ」
・・・このような態度で人生にうちかっている作者の心持が、描写の含蓄ある手法や構成における善意ある緊密さに、統一をもって滲み出しており、その面でも「贋金つくり」と対比的であると感じられる。心をとらえて真面目にする力はそこから湧いていると思われる。「・・・ 宮本百合子 「次が待たれるおくりもの」
・・・この発言の本質は、先程の作家と人民層とのより緊密なむすびつきを求めていることだと思いますが、発言の中にもあったように、サークルその他へ作家がもっとまめに出席するような機動性が求められていることでもあります。もう一歩深めてこの問題を考えると、・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・プロレタリア文学のみならず、古来の優れた芸術家は、仮令それが今日から見れば極めて主観的なものであろうとも、自身の生活と芸術とは常に緊密に一致させることの必要を理解していたのであった。嘗て運動の他の面に活動して来た人々が今は文学の仕事をしてい・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・ だから、各国の階級闘争が国際的連帯を緊密にするにつれて、文化活動の国際性もこの頃ますます拡大されて来た。 文学活動上の種々の問題、例えば創作の唯物弁証法的方法という問題にしろ、プロレタリア文学の大衆化の問題にしろ、日本の「ナップ」・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・そして、三十年以上彼女の最も緊密な秘書として働いたサザーランド博士があった。当時の社会が婦人の登場を許していなかったあらゆる政治的関係、役所関係の間へ、ナイチンゲールは彼女のあらゆる条件を活用して、ハーバートを動かし、バーネー卿を活動させた・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・北海道の鉱山に働きながら朝鮮の独立運動のために闘っていた一家を中心としてかかれている物語りである。緊密によくかかれている。そして最後は敗戦後の東京で目撃した朝鮮人の解放のよろこびの姿で終っている。譲原さんが清瀬療養所に入院してから書いたもの・・・ 宮本百合子 「譲原昌子さんについて」
・・・ まず私は、人間の心のあらゆる領域、すなわち科学、芸術、宗教、道徳その他医療や生活方法の便宜などへの関心等によって代表せられる人間の生のあらゆる活動が、なお明らかな分化を経験せずして緊密に結合融和せる一つの文化を思い浮かべる。そこで・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
・・・オペラにおいて唱い手が唱いつつ動作しているあの働きと同じ事をやるために、人形使いたちと語り手の間に非常に緊密な気合いの合致が実現されねばならぬのである。そうしてそれだけの苦労は決して酬われないのではない。オペラにおける動作は一般に芸術的とは・・・ 和辻哲郎 「文楽座の人形芝居」
出典:青空文庫