・・・れてしまったが、果して間もなくあるビルディングの地下室にある理髪店へ行くと、金縁眼鏡をかけたそこの主人はあなたのような髪は時局柄不都合であると言って、あれよあれよと驚いている間に、私の頭を甲型か乙型か翼賛型か知らぬがとにかく呉服屋の番頭のよ・・・ 織田作之助 「髪」
・・・又国内思想指導の方針としては、較もすれば党派的に陥る全体主義ではなくして、何処までも公明正大なる君民一体、万民翼賛の皇道でなければならない。 以上は私が国策研究会の求に応じて、世界新秩序の問題について話した所の趣旨である。各国家・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・婦人の政治参加の問題どころか、戦争に熱中した政府は戦争に対する人民の批判や疑問を封鎖するために、近衛首相を主唱者として、政党を解消させ、翼賛政治会というものにして、議会そのものの機能を奪った。婦人運動の各名流たちは、「精神総動員」に参加して・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・ 政治の本来は自ら自らを治める力と方法との自覚の謂であろうし、万民翼賛の思想にしろその本質に立つものと思うが、たとえば女子の高等程度の学校で、女生徒たちは昨今何かの自主的な活動に訓練されているのであろうか。 学校の寄宿舎生の間に、自・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・ 翼賛会の国民生活指導部長喜多氏は、十三日の朝日新聞へ、国民的訓練の欠如、健全な娯楽の指導の必要としてこの事件を観察し、そこに学生の多かったことは特別反省すべきことだと、「昨夜もあすこへ行って学生を呼んで叱りとばしたが今の時代、学生は娯・・・ 宮本百合子 「「健やかさ」とは」
・・・日本の全文化が軍部と検事局思想部の露骨な統制のもとにおかれるようになった。翼賛会の初代の文化部長岸田国士、つづいて同じ位置についた高橋健二その他の人々は、文化の擁護のために何事もなさなかった。一九三〇年代のはじまりに「文学の純芸術性」を力説・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・その時分、翼賛会ができた。議会は政府案に決して反対しないという条件の翼賛議会になり、侵略戦争賛成、種々の人権抑圧法賛成、いくらでも軍事費をつかうこと賛成と、侵略戦争のためのロボット議員が推薦候補で議員になった。便乗という卑屈なくせに利慾のま・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
出典:青空文庫