・・・「何だと親を捕えて泥棒呼わりは聞き捨てになりませんぞ」と来るところを取って押え、片頬に笑味を見せて、「これは異なこと! 親子の縁は切れてる筈でしょう。イヤお持帰りになりませんならそれで可う御座います、右の次第を届け出るばかりですから・・・ 国木田独歩 「酒中日記」
・・・門外漢の妄語として御聞き捨てを願います。 寺田寅彦 「御返事(石原純君へ)」
・・・の一言で聞き捨て、見捨て、さて陣鉦や太鼓に急き立てられて修羅の街へ出かければ、山奥の青苔が褥となッたり、河岸の小砂利が襖となッたり、その内に……敵が……そら、太鼓が……右左に大将の下知が……そこで命がなくなッて、跡は野原でこのありさまだ。死・・・ 山田美妙 「武蔵野」
出典:青空文庫