・・・そこには能知者がいっぱいに滲透して所知者の間のあらゆる科学的背理や矛盾は、それによって統一され融和される。そういう点から見て最も多くの芸術としての文学の特徴を発揮しているものはこの種の詩歌でなければならない。それだから作物の価値には内容の科・・・ 寺田寅彦 「文学の中の科学的要素」
・・・東條を頭目とする日本の戦犯者の国際裁判の最終日に、キーナン検事が、「正義を伴わない文明は背理である」といった言葉のうちには、人類の正義への評価があった。第一次大戦後、平和のための国際連盟にアメリカが、最大の能力をもちながら加入しなかったこと・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・して此の生活の感覚化を生活の理性化へ転開することそれ自体は、決して新しき感覚派なるものの感覚的表徴条件の上に何らの背理な理論をも持ち出さないのは明らかなことである。もしこれをしも背理なものとして感覚派なるものに向って攻撃するものがありとすれ・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫