・・・正直に、手前の背骨を痛くして耕してた百姓から牛までとっちまって、日傭いになり下がらせる社会主義ってのは分らねえんだ」 集団農場組織に対しては都会の労働者の間にさえそういう無理解が一部のこされた。当時ソヴェト同盟の遠い隅々で集団農場組織に・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・を主張しているそうですが、バーや女給やデカダンスの中では毅然たるものが発生しにくいし他に生活はないし、背骨が立たぬから説話体をこね上げたらし。解子さんなどこういう才能の跳梁に「私は小説を書いてゆけるかしら」とききに来られました。作家の生活の・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・けれども、文学運動の面では、新日本文学会の創立大会でも、その後につづく第四回までの大会でも、民主主義文学運動の背骨としての労働者階級の文学の性格と方向とは、明確に規定されなかった。それには次のような原因があった。昔のプロレタリア文学運動の時・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 皆の者は、そのうす汚れた布片れにくるんであった、赤錆のついた鉄棒か斧が、真暗の湯殿に立って、若し誰でも来たらと身構えて居る男の背後にかくされてある様子を思うと、ほんとに背骨の一番とっぽ先が、痛痒い様な感じを起して来る。 若し自分で・・・ 宮本百合子 「盗難」
・・・いろいろ個性的な色彩をもった随筆がうかがわれたが、その中には、一応随筆の体裁をもちながらも、その奥には何となく魚のような背骨をひそめていて、小さくても弱くても、人間の生活と芸術のまともさを守り、その希望の閃きを見失うまいとした随筆もあった。・・・ 宮本百合子 「はしがき(『女靴の跡』)」
・・・プーシュキン、ゴーゴリ、レルモントフ等をはじめ、トルストイ、チェホフ、ゴーリキイなどをのぞいたら、世界の文学は云わば背骨の大切な部分をひきぬかれたようなものだ。チェルヌイシェフスキー、ベリンスキーその他の人々の文芸評論は、世界文学に、社会と・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・ 芥川龍之介は、ブルジョア文学の背骨の中に漱石がのこして行った宿題を、その生涯で解いた作家であった。社会的制約の間に切っぱつまった自我の姿を凝視しつつ、彼は自己を破壊することでそれを主張したのであった。 プロレタリア文学の擡頭は・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・は、何と云う強靭さで私の背骨を繋ぎ合わせて居る事だろう。 皮の下に、肉の下に、繋ぎ合わされた骨と骨とを貫いて絶えず満ちて居る髄溶液を自覚して居るものが何処に在るだろうか。自然は生育の過程の何時の間にか、堅い折れ易い骨の裡に、流動する液体・・・ 宮本百合子 「無題」
・・・彼らは口先で人を言い負かそうとするような、性格の弱い、道義的背骨のない人物であって、おのれより優れたものを猜み、劣ったものを卑しめる。このそねみと卑しめとは、他に対する批判と厳密に区別されなくてはならない。法螺ふきをそしるとか、自慢話を言い・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫