・・・へん、お堀端あこちとらのお成り筋だぞ、まかり間違やあ胴上げして鴨のあしらいにしてやらあ」 口を極めてすでに立ち去りたる巡査を罵り、満腔の熱気を吐きつつ、思わず腕を擦りしが、四谷組合と記したる煤け提灯の蝋燭を今継ぎ足して、力なげに梶棒を取・・・ 泉鏡花 「夜行巡査」
・・・ 大将が、向うで、腹をかかえて笑いながら、剣をかざして、「胴上げい、用意っ。」といいました。 楢夫は、草の上に倒れながら、横目で見ていますと、小猿は向うで、みんな六疋位ずつ、高い高い肩車をこしらえて、塔のようになり、それがあっち・・・ 宮沢賢治 「さるのこしかけ」
・・・十一、ノルデは三べん胴上げのまま地べたにべちゃんと落とされた。 どうだい。ひどくいたいかい。どう? あなたひどくいたい? ノルデつかれてねむる。十二、ノルデは太陽から黒い棘をとるためにでかけた。 太陽がまたぐらぐらおどりだし・・・ 宮沢賢治 「ペンネンノルデはいまはいないよ 太陽にできた黒い棘をとりに行ったよ」
出典:青空文庫