・・・が室生氏の推薦で芥川賞候補にあげられ、四作目の「放浪」は永井龍男氏の世話で「文学界」にのり、五作目の「夫婦善哉」が文芸推薦になった。 こんなことなれば、もっと早く小説を書いて置けばよかったと、現金に考えた。八年も劇を勉強して純粋戯曲論な・・・ 織田作之助 「わが文学修業」
・・・これでみると、まるであなたひとりで芥川賞をきめたように思われます。これは、あなたの文章ではない。きっと誰かに書かされた文章にちがいない。しかもあなたはそれをあらわに見せつけようと努力さえしている。「道化の華」は、三年前、私、二十四歳の夏に書・・・ 太宰治 「川端康成へ」
・・・そのような夜半には、私もまた、菊池寛のところへ手紙を出そうか、サンデー毎日の三千円大衆文芸へ応募しようか、何とぞして芥川賞をもらいたいものだ、などと思いを千々にくだいてみるのであるが、夜のしらじらと明け放れると共に、そのような努力が、何故と・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ 山上通信太宰治 けさ、新聞にて、マラソン優勝と、芥川賞と、二つの記事、読んで、涙が出ました。孫という人の白い歯出して力んでいる顔を見て、この人の努力が、そのまま、肉体的にわかりました。それから、芥川賞の記事を読・・・ 太宰治 「創生記」
・・・ 改造十一月号所載、佐藤春夫作「芥川賞」を読み、だらしない作品と存じました。それ故に、また、類なく立派であると思った。真の愛情は、めくらの姿である。狂乱であり、憤怒である。更に、 寝間の窓から、羅馬の燃上を凝視して、ネロは、黙し・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・それが二、三ヶ月後くらいに新聞の広告に大きく名前が他の諸先輩と並んで出て、それが後日第一回芥川賞の時に候補に上げられました。 その「逆行」と殆ど前後して同人雑誌「日本浪曼派」に「道化の華」が発表されました。それが佐藤春夫先生の推奨にあず・・・ 太宰治 「わが半生を語る」
・・・それ以前、小林多喜二を記念する賞があったが、それは広汎な影響を持つ間なくして消され、一九三三、三四年ごろから芥川賞、直木賞、文芸懇話会賞等が出来た。丁度、一部の作家が文芸復興ということを唱え出し、而もそれには現実の根拠が薄いので一向実際の文・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・この三四年来、芥川賞、直木賞、文芸懇話会賞等々夥しい賞が懸けられ新人を招いている。ところで今日までこれらの賞を受けた人々は果して本質的な新人であったろうか。賞を与える側がその新人でないことに就いて消極的な言葉を添える有様であった。或る賞のた・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・文芸春秋社主催の芥川賞、直木賞。文学界賞、三田文学賞、池谷信三郎賞等。やはりこれも時代の特徴の一つとして数えられることは、これらの「賞」を与えられた石川達三、高見順、石川淳、太宰治、衣巻省三その他多くの作家が、言葉どおりの意味での新進ではな・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 困難な新進の道 芥川賞を得た小田嶽夫・鶴田知也「二新人に訊く」という題で『三田新聞』に小田嶽夫氏の書いている文章をよみ、それと腹合わせに「創生記」を読み、私は鼻の奥のところに何ともいえぬきつい苦痛な酸性の刺戟・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
出典:青空文庫