・・・相懸り法は当時東京方棋師が実戦的にも理論的にも一応の完成を示した平手将棋の定跡として、最高権威のものであったが、現在はもはやこの相懸り定跡は流行せず、若手棋師は相懸り以外の戦法の発見に、絶えず努力して、対局のたびに新手を応用している。が、六・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・ 彼は、もと、若手の組合員だった鍋谷や、宗保や、後藤の顔を見た。それから彼等の小学校の先生だった六十三の、これも先生をやめてから、若い者よりももっと元気のある運動者となった藤井にあった。 どの顔にも元気がない。 組合が厳存してい・・・ 黒島伝治 「鍬と鎌の五月」
・・・の首を斬るよりも易しと鯤、鵬となる大願発起痴話熱燗に骨も肉も爛れたる俊雄は相手待つ間歌川の二階からふと瞰下した隣の桟橋に歳十八ばかりの細そりとしたるが矢飛白の袖夕風に吹き靡かすを認めあれはと問えば今が若手の売出し秋子とあるをさりげなく肚にた・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・ あたたかくなって、そろそろ桜の花がひらきはじめ、僕はその日、前進座の若手俳優の中村国男君と、眉山軒で逢って或る用談をすることになっていた。用談というのは、実は彼の縁談なのであるが、少しややこしく、僕の家では、ちょっと声をひそめて相談し・・・ 太宰治 「眉山」
・・・老人株ではカナル線の発見者ゴールトシュタインや、ワールブルヒなどがおり、若手ではゲールケ、プリングスハイム、ポールなどもいた。日本人では自分の外に九州大学の桑木さんもある期間出席されたように思う。 鼻眼鏡でぬうっと澄ましていて、そうして・・・ 寺田寅彦 「ベルリン大学(1909-1910)」
・・・作家の団体は有志者を募集し、メイエルホリドの若手俳優や劇場労働青年の遠征隊と一緒に、特別仕立の列車で文化宣伝にモスクワを立った。 いろいろ面白い農村新生活の記録の報告が現れた。国立出版所は、五カペイキや二十カペイキの廉価版を作って、それ・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・の傑作として紹介された農村を主題とする文学作品、ショーロホフの「静かなドン」にしろ、ゴルブーノフの「解氷期」にしろ、「村娘」「農村通信員の手記」「貧農組合」「コサック村」、すべて「ラップ」の若手作家、主としてコムソモール出身の作家によって書・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 明治文学の再評価の機運があることや、不安の呼び声の裡に方向を失っている若手のスランプが刺戟となったりして、自然主義以来の老作家たちが、それぞれ手練の作品をひっさげ、数年の沈黙を破って再び出場して来たことである。島崎藤村は明治文学の記念・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・に出演したメイエルホリド劇場の若手の俳優たちが、モスクワ芸術座の俳優のように鮮明な発音で朗読法をこなすまでには、大分時間がかかるという感じだった。 詩劇として、ベズィメンスキーのこの制作は、ソヴェトのプロレタリア文学の問題として各方面で・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
出典:青空文庫