・・・ 前田家のような大大名の藩で発達した文化が、能・茶の湯、宗教では禅であるということも意味がある。当時の社会生活から一応は游離して、精神と富との避難所としての文化が辛うじて生きのびた。 僅に、九州や中国の、徳川からの監視にやや遠い地域・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・ 久内が、父の山下などと茶の湯をやる、茶の湯の作法を、横光は丹念に書いて「戦乱の巷に全盛を極めて法を確立させた利休の心を体得することに近づきたいと思っている」久内の安心立命、模索の態度を認め、更に「わが国の文物の発展が何といっても茶法に・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・「鼓と琴と茶の湯と花と」「マア、そんなにならって一日の内にみんななさるの」 私は自分にくらべて随分いろんな事をするもんだと思ったんでこんな事をきいた。「そうやなも、気の向かんときは行かんけど……」「皆すきなものばっかりな・・・ 宮本百合子 「つぼみ」
・・・外国人に見せるものの中に茶の湯という項は必ずある。果してそれを今日の日本の一般的な日常生活の姿として云い得るであろうか。鉄飢饉の記事は新聞に目立っているのであるが、その飢饉によって巨利を占める人々が、茶席に坐って、鉄を生まぬ日本の風土が発生・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
出典:青空文庫