・・・の華々しい発展は社会主義共和国の教育で大虐待をうけるだろうと予想した。個人の才能、傾向、性格、そんなものは蹴散らされ、たった一つの鋳型=共産主義教育にうちぬかれた機械人形のような子供らが出来るのだろうと思っていた。 ところが、一年一年経・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・法隆寺の火事で壁画が滅茶滅茶にされたことは、人々に何となし生命あるものの蒙った虐待を感じさせ、ショックは大きく波紋をひろげた。更にこの法隆寺の火事からは、思いがけない毒まんじゅうがころげ出し、責任者である僧は、留置場でくびをつりそこなった。・・・ 宮本百合子 「国宝」
・・・人間の心は、こういうときはこうもなるものです、と居直ってすむものならば、非人道的な捕虜虐待で日本の軍人が戦争犯罪に問われる道義的根拠は失われる。最近ヒットしたルポルタージュの選手三人の座談会で、著者は、いよいよとなったら身を売っても仕方がな・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・ 斯ういう事情があっても、良人が自分を虐待するという為に訴訟し弁護され、勝訴するのは、公正な事でございましょうか? C先生 私は、人間の魂に余り「知」の不足する事を涙とともに悲しまずには居られないのでございます。 此の事件を・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・彼が、虐待し、早死した妻との間に生れた娘のロザリーは、名づけの祖母を母と呼び、ロンドンで一緒に暮しております。 小さいロザリーは、三度の御飯も皆と一緒に食べるし、褓母や家庭教師と云うものも持っていません。 大喜びで朝飯をしまうと、ピ・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・ マクシムの父親というのは陸軍将校であったが、或る時その部下を虐待した廉でシベリヤに流されたという男である。その時分のロシア軍隊生活と云えば有名なひどいものであったにもかかわらず、その中で部下に対する虐待を問題とされ、処分されたというこ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・父親である将校は部下を虐待したかどでシベリアに移されたという男である。ニージュニへは十六歳で来た。二十歳の時は一人前の家具師で、その仕事場が祖父の家とならんでいる。 ある日、祖母さんのアクリーナが娘のワルワーラと庭へ出て木苺をあつめてい・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・ ここを見ると、帝政時代のロシアが政治犯をどんなに虐待したかが、アリアリわかる。写真を四方八方から撮って、詳細極まる人相書をこしらえているばかりではない。鉄の手枷足枷まではめたレーニンが、一八九五年にまだ大学生で政治犯としてシベリアに送・・・ 宮本百合子 「ロシアの過去を物語る革命博物館を観る」
・・・ 第一に考えられるのは、一般民衆が勢力を得るとともに、在来の貴族的芸術を虐待するだろうという事である。露国の農民や労働者がレムブラントを虐待する。婦人運動に加わっている英国の女がレムブラントを破壊しようとする。ドイツの砲兵が美しい寺院建・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫