・・・ しかし、さういふ不愉快な町中でも、一寸した硝子窓の光とか、建物の軒蛇腹の影とかに、美しい感じを見出すことが、まあ、僕などはこんなところにも都会らしい美しさを感じなければ外に安住するところはない。 広重の情趣 尤も、今の東京・・・ 芥川竜之介 「東京に生れて」
・・・イイカネ、螺線の類は非常に多いがネ、第一は直線的有則螺線サ、これは玩弄の鉄砲の中にある蛇腹のような奴サ、第二は曲線的有則螺線サ、これはつまり第一の奴をまげたのと同じことサ、第三は級数的螺線サ、これは螺線のマワリが段々と大きくなる奴サ、第四は・・・ 幸田露伴 「ねじくり博士」
・・・ゴーリキイは鉛筆をとり、先ず家の正面のすべての蛇腹と屋根の棟飾の上に烏や鳩、雀などを描いた。窓の前の地べたの上には洋傘をさしている歪み足の人間。それから全景の上に斜の線を引いて、出来上ったものを主人のところへ持って行った。 眉をつり上げ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫