・・・ セメントの新道路は鉄道線路の向へ行っても、まだ行先が知れない。初めわたくしはほどなく荒川放水路の土手に達するつもりであったので、少し疲労を覚えると共に、俄に方角が知りたくなった。丁度道の片側に汚い長屋建の小家のつづきはじめたのを見て、・・・ 永井荷風 「元八まん」
・・・これは妻君が方々へ使を出して主人の行先を尋ねられたためであった。 容斎の芳野、暁斎の鴉、その外いろいろな絵を見せられた。それについて絵の論が始まった。 庭にはよろよろとした松が四、五本あって下に木賊が植えてある。塵一つ落ちて居ない。・・・ 正岡子規 「車上の春光」
・・・ 遠足をやるにしても、遠足の実行委員があげられ、行先、時間割、見学予定、旅費その他を研究する。級の討議で決定する。――ソヴェト同盟で教師は、ほんとに指導者なのだ。 このように有効に組織されている小学校へ、全同盟の学齢児童を経費国庫負・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
出典:青空文庫