・・・しかしこういう絵もこのままではすぐ行き詰りになりやすい。 円筒形の上の断面を楕円形に表わして、底面の方は直線でかいてしまう事が流行するようである。こういう流行は永くはつづくまい。「天然」と絵具だけからは絵は生れないし、「自己」と・・・ 寺田寅彦 「二科会展覧会雑感」
・・・現在世界じゅうの学者が争って研究しているような問題が、やがて行き詰まりになるであろうということは当然の事でもあり、また過去の歴史がことごとくこれを証明しているように思われる。そういう場合に、突然にどこからか現われて来て新生面を打開するような・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
・・・ むしろそういう研究を奨励することが学問の行き詰まりを防ぐ上に有効でありはしないか。 もちろん多くの優秀なる学徒たちは何もわざわざそういう質的の、容易なようで実はむずかしい実験などをやらなくても、立派に量的であって、しかもおもしろく・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
・・・以後、私は、彼の作品が、或行き詰りを持ち始めたことを知った。読んで見ると、精神の充実したフルーエントなところがなく修辞的でありすぎ、いつまでも青年の感傷に沈湎して居るような歯痒さがあった。「星座」にも同じ失敗を認める。大づかみに、ぐんと人生・・・ 宮本百合子 「有島武郎の死によせて」
・・・そして、革命的作家は益々切迫するブルジョア経済の行き詰りとともにファッショ化する権力の文化抑圧と如何に闘うべきか。これも亦各国の事情を参照して決議された。日本からは、松山、永田という二人の同志が出席した。 革命文学国際局はこの会議を・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・純文学の行き詰りが感じられ、私小説からの脱出が望まれているのは前年来のことであるが、その脱出の方法が一癖も二癖もあり、云って見れば、社会悪を背負って尻を捲って居直った姿で小説などに現れて来たのである。 一方でヒューマニズムが抽象論になっ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・あの映画が現在のアメリカが経済的な行詰りを感じていながら、それを徹底的な方向で打開し得ず人々の心がまた現在自分たちの置かれている矛盾や困難を写実的にとりあげた作品を喜ばないような逃避的な気持にいる、その一面の現れがあの映画にでている訳でしょ・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・特に資本主義の国内的国際的行き詰りの切き 宮本百合子 「婦人雑誌の問題」
・・・、地主の官憲がいけないといったところで、わたしら働く婦人みんな本当に腹から帝国主義戦争には絶対反対なのだし、雑誌の調子がきつくなって来たといわれても、わたしらの生活の土台となっている資本主義の世の中の行き詰りがまず日増しにきつくなって来てい・・・ 宮本百合子 「ますます確りやりましょう」
出典:青空文庫