・・・ 一九三六年二月二十六日の事件の衝撃は、外見的に作家生活の変化の動機とはならなかったが、その影響は深くヒューマニズムの問題の展開上にあらわれた。 前年度の秋から、文芸懇話会賞の授賞者選出にからんで文化統制の問題が一般文化人の・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 新聞と異常で衝撃的なニュースとを結びつけて期待しているような不幸な近代の都会神経を、購読者の側からも自省しなければならないと云われたのもあたっている。それにつられて御丁寧にも金権政治工作に毎日を買いわたしてしまっているのは、ほかならぬ・・・ 宮本百合子 「ジャーナリズムの航路」
・・・ 四 牧野信一の自殺は、当時作家の生活感情に一つの深く暗い衝撃を与えた出来事であった。当時は純文学の作家が思想的にさまざまの苦痛混乱に曝されていたばかりでなく、経済的にも益々逼迫して来る不安におかれている時・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・大体今回の執筆禁止は文壇をつよく衝撃したが、全般的にはどこやら予期していたものが来た、その連中はやむを得まい、却ってそれで範囲がきまってすこし安心したような気分もあり、だが、拡大するという威嚇で、やはり不安、動揺するという情況である。文芸家・・・ 宮本百合子 「一九三七年十二月二十七日の警保局図書課のジャーナリストとの懇談会の結果」
・・・ マヤコフスキーとは別な意味で、社会的現象のつかみかたが弁証法的でない、という点が論議の中心であった。衝撃隊員は一人のこさずソヴェト式の善玉。妨害分子は一人のこさず悪玉ぞろい。その二つの型の間に、機械的なマルクシズム応用の対立があるだけ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ブルジョア作家、自由思想家などもその衝撃を披瀝し、三・四月の文芸時評はことごとく何かの形で、同志小林の受難にふれたのである。しかしながら、それらのブルジョア作家、批評家の大部分が、同志小林多喜二の業績を追慕しながらも、自分の属す階級の制約性・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価に寄せて」
・・・三十七年もの間生活をともにして来た妻を失った空虚の感じを、父が突然の衝撃として受けないよう、母が今生涯を終ったのは万全をつくした上でのさけがたいことであって、このほかに在りようのなかった成行きであると思うようにと、謂わば私のとり乱さない態度・・・ 宮本百合子 「母」
・・・この小説が当時の知識人に与えた衝撃は深刻且つ人生的なもので、己を知るに賢明であった逍遙が人及び芸術家としての自分を省み、遂に生涯小説の筆を絶つ決心をかためるに到ったのも、逍遙自ら率直に語っている通り「浮雲」における作者の人間探究の態度の真実・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・う対立と隔絶の中からドライサアの見出した悲劇が、現代のアメリカの社会悲劇であるということは、誰しも肯かざるを得ないから、この作品が今から三十年前に発表されたとき、アメリカのあらゆる読書人が何かの意味で衝撃を感じたということは十分に推察される・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・争う色彩の尖影が、屈折しながら鏡面で衝撃した。「陛下、お気が狂わせられたのでございます。陛下、お放しなされませ」 しかし、ナポレオンの腕は彼女の首に絡まりついた。彼女の髪は金色の渦を巻いてきらきらと慄えていた。ナポレオンの残忍性はル・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
出典:青空文庫