・・・母が死んでから、もう、元気がないようでしたが、それから、すこし、まあ遊びはじめたのでしょうね、店は可成大きかったのですが、衰運の一途でした。あのときは全国的に呉服屋が、いけないようでした。いろいろ苦しいこともあったのでしょう。いけない死にか・・・ 太宰治 「新樹の言葉」
・・・「衰運」におくる言葉 ひややかにみづをたたへて かくあればひとはしらじな ひをふきしやまのあととも 右は、生田長江のうたである。「衰運」読者諸兄へのよき暗示ともなれば幸甚である。 君、あとひ・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・ 絵画の上よりいうも蕪村は衰運の極に生まれて盛んならんとして歿せしなり。蕪村はみずから画を造りしこと多く、南宗の画家として大雅と並称せらる。天明以後絵画にわかに勃興して美術史に一紀元を与えたることにつきて、蕪村もまた多少の原因をなさざり・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
出典:青空文庫