・・・ きのうの見とおしにおいて正しかったように、明日においても私たちを裏切ることのない、日本共産党を支持しましょう。〔一九四六年四月〕 宮本百合子 「幸福のために」
・・・の問題を取扱うとして、つぎの如きもどかしさがその創作を裏切る。即ち「性の問題」を取扱う場合も、男はそれを彼の生活の一部として虚心に口にし、芸術化し得るのに対し、女性はそれをより以上に敏覚する素質を与えられていながら、彼女がその原始時代から伝・・・ 宮本百合子 「女流作家として私は何を求むるか」
・・・野呂栄太郎は、その治安維持法によって殺され、その直接の売りわたし手の査問を担当した事件の裁判に当って、自身もまた同じ悪虐な法律のしめなわにかけられ民衆に対する責任と義務と信頼とを裏切る仕儀に陥った。追憶の文章を流暢に書きすすめるとき、逸見氏・・・ 宮本百合子 「信義について」
・・・アカという言葉を、戦争中の日本軍事権力は人民を裏切る国賊という意味でつかわせた。そして、侵略戦争に反対する良心の声を抹殺したのであった。その結果は、どうだったろうか。 第二次大戦後、世界が平和運動を最も重大な歴史の課題として、そのた・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・ だれでもがよくこの頃は親達を裏切った気持だって事を云います、 思想の違って居る事やなんかで少し位の事はあるかもしれないけど裏切るほどの気持にだれでもがなるもんでしょうか。 私は或る一つの悲しいいたましい『流行病』だって云うんで・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・ 党は多くの人材を加え、婦人の間にも代議士その他として有能な活動家を出しているとき、実際に働けないとわかっているものを立たせ、当選させ大衆の信頼を裏切ることが賢明といえるでしょうか。わたしが健康をもっていないことは残念ですが、わたし自・・・ 宮本百合子 「文学について」
九月号の『婦人文芸』に藤木稠子という作者の戯曲「裏切る者」という一幕ものがのっていた。私は雑誌を開いたときその表題を見たのであったがつい用事に追われ、そのときはゆっくり作品を読む機会を失ってしまった。 ところが今日、あ・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
・・・しかもそこにすべてを裏切るある物の閃きがある。人は密室で本性を現わす無恥な女豚を感じないではいられない。――Kは生ぬるいメフィストを連想させた。彼は自己の醜さを嘲笑する。しかし醜さを焼き滅ぼそうとする熱欲があるからではない。彼は他人の弱所を・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫