・・・等に描かれている二十歳前後までの若いゴーリキイの生活環境の中で――ヴォルガ通いの蒸汽船の皿洗い小僧、製図見習小僧、波止場人足、そして一種の浮浪者であったゴーリキイに写真を撮ってやろうという程彼を愛する者はおそらく一人もなかったであろう。彼の・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・ 靴屋の小僧をやめて後、ゴーリキイは製図師の見習小僧をさせられた。ヴォルガ通いの汽船の皿洗いをし、聖画屋の小僧となり、ニージニの定期市での芝居小屋で、馬の脚的俳優となったりした。日本では西南の役があった次の年、一八七八年からの五、六・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ 靴屋の見習小僧。製図師の台所小僧兼見習。辛棒のならないそれ等の場所の息苦しさから逃げ出して、少年ゴーリキイはヴォルガ河通いの汽船の皿洗い小僧となった。到るところで彼は「ぼんやりする程激しく労働した。」そして、彼の敏感な感受性と自分の生・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・熱湯でやけどをしたゴーリキイが二ヵ月で暇を出されて来ると、次は製図工へ見習にやられた。そこで一年辛棒した。生活はあまり辛い。逃げ出して、ヴォルガ河通いの船へ皿洗いとして乗組んだ。 月二ルーブリで、朝六時から夜中までぶっ通しに働かせられる・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・ 手が癒ると、今度は製図工見習にやられたが、住込みの見習小僧の生活はここでも前同様であった。主人は少年の彼を女中代り、下男代りにこき使い、おまけに二人の炊事女がこれ又自分達の下働きとして追い廻す。ゴーリキイは後年当時を回想してこう書いて・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
出典:青空文庫