・・・ その次の『柵草紙』を見ると、イヤ書いた、書いた、僅か数行に足らない逸話の一節に対して百行以上の大反駁を加えた。要旨を掻摘むと、およそ弁論の雄というは無用の饒舌を弄する謂ではない、鴎外は無用の雑談冗弁をこそ好まないが、かつてザクセンの建・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・ 以上が日蓮の論拠の根本要旨である。 日蓮はこの論旨を、いちいち諸経を引いて論証しつつ、清澄山の南面堂で、師僧、地頭、両親、法友ならびに大衆の面前で憶するところなく闡説し、「念仏無間。禅天魔。真言亡国。律国賊。既成の諸宗はことご・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・ただ徒らに冗漫の辞を羅列して問題の要旨に触るるを得ざるは深く自ら慚ずる所なり。これに依って先覚諸氏の示教に接する機を得ば実に望外の幸いなり。 一 ある自然現象の科学的予報と云えば、その現象を限定すべき原因条件・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・学者がある日ある学会である論文を発表したその晩に私の宅へ遊びに来てトリオの合奏をやっていたら、突然某新聞記者が写真班を引率して拙宅へ来訪しそうして玄関へその若い学者T君を呼び出し、その日発表した研究の要旨を聞き取り、そうしてマグネシウムの閃・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・しかしともかくも出発点における覚悟と努力の向け方においては自分が本当の南画の精神要旨と考えるものに正しく適合している。狭く南画などとは云わず、一般に芸術というものが科学などの圧迫に無関係に永存し得べき肝心の要素に触接しているように思われるの・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・その演説の要旨の中から、少しばかり抄録してみる。 「レーリーの全集に収められた四四六篇の論文のどれを見ても、一つとしてつまらないと思うものはない。科学者の全集のうちには、時のたつうちには単に墓石のようなものになってしまうのもあるが、レー・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・当時伏字にされて今日ではうずめられないところは、その要旨を附記してそのままにされている。終りには「社会と人間の成長」がそえられた。 一九四九年三月〔一九四九年五月〕 宮本百合子 「あとがき(『モスクワ印象記』)」
・・・書かれている要旨は進歩に目標をおいたものであり、ラディカルでさえあるものなのに、その文章の行間を貫く気魄において、何かが欠けていてものたりない。そういうことをしばしばきく。かえって、抑圧がひどかったとき、岩間にほとばしる清水のように暗示され・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・これに関連し『東京朝日新聞』誌上に『我等の主張の根本要旨』を執筆す。我々の意見殆ど全部容認され、右議案二月末貴族院を通過す。衆議院を通過することも亦決定的なり。四六書院より戯曲集『女人哀詞』を出版。『風』なお継続。三月末完結の予定。」その後・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
出典:青空文庫