・・・ 以上を要約するに、現実に立脚した、奔放不覊なる、美的空想を盛り、若しくは、不可思議な郷土的な物語は、これを新興童話の名目の下に、今後必ずや発達しなければならぬ機運に置かれています。いまの児童の読物のあまりに杜撰なる、不真面目なる、・・・ 小川未明 「新童話論」
・・・が通っており、数行のレジュメで要約されるストーリーをもっている場合が多い。これに反して、中間的随筆は概してはっきりした「筋」をもたない場合が多い。しかし、この差別も実はそれほどはっきりしたものではなくて、創作欄にあるものでも、ほとんど内容的・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・実験的現象として見た割れ目の現象はなかなか在来の簡単な理論などでは追いつきそうもない複雑多様なものであって、これに関する完全な説明のできる前にはまだまだ非常にたくさんの実験観察ならびにそれからの帰納的要約が行なわれなければならない。そうして・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・尤も、この本の中に現われているそれらの思想は畢竟あらゆる日本的思想の伝統を要約したようなものであるから、おそらくこの本を読まされなくてもやはり他の本や他の色々の途から自然に注入されたかもそれは分からないと思われる。しかしその時代に教わった『・・・ 寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
・・・しかし、ここでは、それらの地方的特性を総括しまた要約した「一般的日本人」の「要約した日本」の自然観を考察せよというのが私に与えられた問題であろうと思われる。そうだとすると問題は決してそう容易でないことがわかるのである。 われわれは通例便・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・しかしいかなる場合にでも、その研究者が物理学現在の全系統について、正しい要約的な理解を持っていることだけは必須な条件である。日本でもまれに隠れた篤志な研究者がいて、おもしろい問題をつかまえて、おもしろい研究をしている人はあるようであるが、惜・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
・・・という簡明な要約で「風知草」にとりあげられている一つの問題は、ひろ子ひとりに関する心理の問題ではない。たとえば、佐多稲子の「くれない」という小説の女主人公の苦悩の根底にも潜んでいる問題である。しかし、治安維持法があり、現実が現実の内容のまま・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・彼女のような廉直なひとに、彌次馬的なわいわい騒ぎや、女だということについての物見高さや、俄な尊敬、阿諛がうんざりであったこと、その気分からそういう形に要約された言葉の出たこともわかる。けれども、エーヴの筆がやはりその限界にとどまっていること・・・ 宮本百合子 「寒の梅」
・・・ 著者は、文章学というものが過去の修辞学と異なったものとしてうち立てられる現代の必然性を大体次のように要約されている。「現代の文章は何よりも先ず、自己の思想があらわに出ていなければならぬ。思想と文章との一致、これが現代文章の唯一の準・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・ 私へ下さる通信の書籍の名で占められている部分、また非常に要約された文章、またはあるときは全く言葉としては書かれていないことがあっても、私に感じられているものが、父へのお手紙の中には横溢されて居るのを感じました。くりかえしくりかえしよみ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫