・・・能や仕舞は庶民生活の中から自然にわき出した動作が要約され芸術化されたものではなくて、貴族生活、武士生活の感情と思想とが洗練し集約しつくした動きに象徴されたものである。習ってゆく道すじから云うと、能や仕舞ほど形式への絶対の服従を求める芸は殆ど・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・ひとくちに要約すれば、それは文学に於ける人間の再生の課題であろうと思う。人間は文学の世界において、物に従属させられる人間から、物の主人である人間の現実の生命をとり戻さなければならないであろう。生存の条件の下に自主の力のない運命をくりひろげる・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・性的交渉にたいして精神の燃焼を知覚しえない男・女のいきさつのなかに、この雄大な二十世紀の実質を要約してしまうことは理性にとって堪えがたい不具です。文学の世界、芸術の世界では、どうして、こういう人間性の崩壊が、あやしまれず、かえって文学的だと・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ 二 現状について『文学サークル』第九号に、『勤労者文学』の発展をめざして行われた徳永直と小田切秀雄の討論の要約がのせられている。アンケート用として整理されたものである。両者の主張の整理のしかたに、整理した人の・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・それらの引用文と引用文との間の接続が強固な思索のリズムで行っていないところがあるように思えるし、著者が或る結論に到達した推論の過程なども、小冊子では出来るだけ要約された形で表現された方が読者の理解に便宜であるとも思えた。 この「社会運動・・・ 宮本百合子 「新島繁著『社会運動思想史』書評」
・・・ 本部の会議の席上いわれた書記長の発言を要約すると大体左の諸点のようです。一 宮本百合子の作品は大衆によまれていない。書記長は三行以上よめない。階級性がなくて多面性がない。観念的である。二 宮本百合子は、ごうまんで天狗になっ・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・ 議事録はと見れば、そもそも一九三〇年度の作家同盟の文学活動を要約すれば云々というスローガンが真黒に塗り消されているばかりではない。三一年の活動方針のところでは、「その方針を決定するに当って、根本的な条件をなすものとして」以下、真黒だ。・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 私は、ここで要約しながらもほんものの、「マリア・バシュキルツェフの日記」を紹介したいと思う。 マリア・バシュキルツェフは一八六〇年の秋、南ロシアのポルトヴァで生れた。ロシア風にいえば、彼女はマリア・コンスタンチノヴァ・バシュキ・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
・・・何ぜなら、感覚は要約すれば精神の爆発した形容であるからだ。 自分は茲では文学的表示としての新しき感覚活動が、文化形式との関係に於ていかに原則的な必然的関連を獲得し、いかに運命的剰余となって新しく文学を価置づけるべきかと云うことについて論・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・は、中央ヨーロッパにおけるよりも千年も古いのである。「アフリカ的なるもの」は、要約して言えば、合目的的、峻厳、構造的である。この特徴はニグロ・アフリカのあらゆる文化産物に現われている。アフリカの民族は快活で、多弁で、楽天的であるが、しか・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
出典:青空文庫