・・・若い女性たちの中に、この頃、はっきりこういう危険な状態を見分ける鑑識ができてきた。一見ささいなこの実力こそ私たちが大きい苦痛と犠牲を払って進んできた一歩前進の最もたしかな収穫であると思う。若い女性たちは自分もその一人としてきょうの人生を歩い・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・――私は、通りすがりに一寸見、それが誰だか一目で見分ける。平賀だ。大観音の先のブリキ屋の人である。 玄関の傍には、標本室の窓を掠めて、屋根をさしかけるように大きな桜か、松かの樹が生えている。――去年や一昨年学校を卒業なさった方に、これが・・・ 宮本百合子 「思い出すかずかず」
・・・けれ共、真の親切を、装うた親切と見分ける眼をふさいで仕舞った、子供心に染み染みと喰い込んだ生活の苦しみと、町の地主等を憎く思うのである。私は斯うやって長い事考え込んで居た。 家の小作人の菊太と云う男が私のわきに来て、「良いお日和・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・この中にアダムとエヴァがいるが、お前はどこで見分けるかい?」 ゴーリキイを、散々卑猥な説明で悩してから爺は教えた。「つまりはお前も馬鹿な小僧さんだね。アダム、エヴァは生れた人間じゃなくて、造られた人だから、臍が無いじゃないか!」・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・楓が芽をふき始めるのは四月の中ごろであったと思うが、若王子の池畔にある数十本の楓だけでも、芽の出る時期は三、四段に分かれており、新芽の色もはっきり四、五種類に見分けることができた。若王子神社の伊藤快彦氏の話では、ここには十何種類かの楓が集め・・・ 和辻哲郎 「京の四季」
出典:青空文庫