・・・ どんな僅かの機会でも、決して見逃すことのない彼女は、幾分かの利益が得られそうだとなると、どんな手段でも策略でも遠慮会釈なくめぐらして、どうにでもしまいには勝つ。 まるで思いがけないような難題を考えたり、云いがかりを作ることは、彼女・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・を、鍋の中に行き来する箸の先に集めて居る小さい者達は、どうして兄の腹立たしい「たくらみ」を見逃すことが有ろう。 子供達の心は、忽ちの内に兄に対する憎しみの心で満ち満ちたものと見え、一番気の強そうな、額の大きな子が、とがった声で、・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・文学の本質から言えばこれは当然のことであるし、人間性の主張という側から見れば寧ろ消極的な形ではあるが、今日の日本の諸事情に照して見れば、なかなか見逃すことの出来ない意義を持っている。ヒューマニズムの社会的、人間的な土台はここにもかくされてい・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムの諸相」
出典:青空文庫