・・・その人たちとしては一応もっともな議論ではあろうが、ただの科学者から見るとごくごく狭い自分勝手な視角から見た管見的科学論としか思われない。 科学者の科学研究欲には理屈を超越した本能的なものがあるように自分には思われる。 蜜蜂が蜜を集め・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
・・・観客はかなりな距離にあって、視角の限定されたスクリーンに対しているから、空間の深さの判断の正確さは始めから断念してかかっている。従って音の出る場所がその音に相当する視像と少しちがった方向と距離とにあってもたいして苦にならない。しかし物を言っ・・・ 寺田寅彦 「耳と目」
・・・ 視角の高い画面の構成は、全体が闊達で、自在なこころの動きがただよっている。自然の様式化と、人物の、言葉すくない、然し実に躍動している配置とは旋律的な調和を保っている。ここには、自然の好きな人間の感覚それにもまして人間の生活、種々様々な・・・ 宮本百合子 「あられ笹」
・・・その視角からこそ現代への相応がとらえられるべきなのだろうと思う。 今日の文学における歴史小説の積極性と、現代小説の面白さとの相会うべき点はここらあたりのところだろう。この面白さは今日の文学の姿では、まだはっきりもしていない可能として、渾・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・ 私は日本プロレタリア文学史の中でも、こんにちのさまざまな現象が、やはりそのような視角から明らかにされる時のあることを想像して、尽きない興味を覚えるのである。〔一九三四年十二月〕 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・モスクワではあらゆるけちな労働者クラブにさえ満ち溢れるそれらのものを、唯一つの手ばたきでここに視角化する魔力は持たぬ。民衆宮とは日本よりの社会局役人をして垂涎せしむる石造建築と最初建造資金を寄附したミス・某々の良心的満足に向って捧げられてい・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫