・・・毎晩毎晩、酔っては討論会を初めますわ!」 甲乙は噴飯して、申し合したように湯衣に着かえて浴場に逃げだして了った。 少女は神崎の捨てた石を拾って、百日紅の樹に倚りかかって、西の山の端に沈む夕日を眺めながら小声で唱歌をうたっている。・・・ 国木田独歩 「恋を恋する人」
・・・「題は僕自身がつける、あえて諸君の討論をわずらわさんやだ、僕には僕の題がある。なにしろ御承諾を願いたいものだ。」「やりましょうとも。王侯貴人の像をイジくるよりか、それはわが党の『加と男』のために、じゃアない、ためにじゃアない、「加と・・・ 国木田独歩 「号外」
・・・う、甘く行けば後の高山の文さんと長谷川の息子が失望するだろう、何に田舎でこそお梅さんは美人じゃが東京に行けばあの位の女は沢山にありますから後の二人だってお梅さんばかり狙うてもおらんよ、など厄鬼になりて討論する婦人連もあった。 或日の夕暮・・・ 国木田独歩 「富岡先生」
・・・日蓮はここにおいて決するところあり、自ら進んで、積極的に十一通の檄文を書いて、幕府の要路及び代表的宗教家に送って、正々堂々と、公庁が対決的討論をなさんことを申しいどんだ。 これは憂国の至情黙視しておられなかったのであるが、また彼の性格の・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・ 彼はあの街頭の討論を終えて、ほっとして汗を拭き、それから急に不機嫌な顔になってあのひとの役所に引上げる。「いかがでございました?」 と下僚にたずねられ、彼は苦笑し、「いや、もう、さんざんさ」 と答える。 討論の現場・・・ 太宰治 「家庭の幸福」
・・・この返答で聴衆が笑い出したと伝えられている。この討論は到底相撲にならないで終結したらしい。 今年は米国へ招かれて講演に行った。その帰りに英国でも講演をやった。その当時の彼の地の新聞は彼の風采と講演ぶりを次のように伝えている。「……。・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・それで大勢のギリシア学者が寄合い討論をして翻訳をした、その結果が「ロイブ古典叢書」の一冊として出版され我邦にも輸入されている。その巻頭に訳載されている「兵法家アイネアス」を冬の夜長の催眠剤のつもりで読んでみた。読んでいるうちに実に意外にも今・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・いつか正月の朝の膳に向かったとき、一体このような見るだけで食わない肴が何を意味するかということが家族の間で問題になったことがあった。討論の結果、これは今でこそほとんど食えないような装飾物であるが、ずっと昔これらのものが非常に珍しいうまい御馳・・・ 寺田寅彦 「新年雑俎」
・・・それかと言って、いつまでもなんらかこの種の方法をとらなければ、独断と独断との間の討論の終結する見込みは立たないように思われるのである。いかにめんどうでも遂行すればするだけ、あともどりはしないであろうと信ずる。しかもそのほう専門の研究者の専門・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・会合で討論して、代表を選出し、共同研究会をもつくらいまでのところしかいっていない。ほんとうにむき出しに自分たちを示すような勉強も調査もスポーツもされない窮屈さがのこっている。 昨日あたりから上野の美術館で婦人画家ばかりの展覧会が催おされ・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
出典:青空文庫