・・・ 場主がまだ何か訓示めいた事をいうらしかったが、やがてざわざわと人の立つ気配がした。仁右衛門は息気を殺して出て来る人々を窺がった。場主が帳場と一緒に、後から笠井に傘をさしかけさせて出て行った。労働で若年の肉を鍛えたらしい頑丈な場主の姿は・・・ 有島武郎 「カインの末裔」
・・・ 新築の市役所の前に青年団と見える一隊が整列して、誰かが訓示でもしているらしかったが、やがて一同わあっと歓声を揚げてトラックに乗込み風のごとくどこかへ行ってしまった。 三島の青年団によって喚び起された自分の今日の地震気分は、この静岡・・・ 寺田寅彦 「静岡地震被害見学記」
・・・ これらの作品は、非常に複雑で熱い意欲をたくみに圧縮しつつ心を打つ力をもっていると思われますし、別な例では、ようやく終った所長の訓示ヒヤカシ半分に拍手浴びせワッと喊声あげて職場へ引き上げる。など、・・・ 宮本百合子 「歌集『集団行進』に寄せて」
出典:青空文庫