・・・を始め戦争に際しては多くが簇出しているし、また日露戦争中、二葉亭がガルシンの「四日間」を訳出している。「四日間」の戦争の悲惨を憎悪した内容が二葉亭の当時の態度を暗示しているかもしれないが、それらは、若し次の機会があらば、すべてをまとめて、も・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・おそらくどんな芸術家でも花の純粋を訳出することは不可能だと言って見せたロダンのような人もあるが、その言葉に籠る真実も思い当る。朝顔を秋草というは、いつの頃から誰の言い出したことかは知らないが、梅雨あけから秋風までも味わせて呉れるこんな花もめ・・・ 島崎藤村 「秋草」
・・・ 余は先生の人となりと先生の目的とを信じて、ここに先生の手紙の一節をありのままに訳出した。先生は新刊第三巻の冒頭にある緒論をとくに思慮ある日本人に見てもらいたいといわれる。先生から同書の寄贈を受ける日それを一読して満足な批評を書き得るな・・・ 夏目漱石 「博士問題とマードック先生と余」
・・・辿られたこと、その結果、女子が重い尊敬をうけた女性支配を齎していたことを証明した点にあった。訳出されているのは序文だけである由だが、バッハオーフェンの思索とその方法と表現とのかかる古典的特色は満喫し得る。ギリシア神話と英雄伝とを日常生活の伝・・・ 宮本百合子 「先駆的な古典として」
・・・ さき頃セルパンに、今度の大戦になってからフランスのある若い娘の書いた手記が訳出されていた。今名を思い出せないけれども、二十五歳になっているその娘は第一次の大戦のとき姉や先輩たちの経験した女としての感情の擾乱を、自分たちは自分たちの青春・・・ 宮本百合子 「若い婦人の著書二つ」
出典:青空文庫