・・・―― 非常に豊富な間投詞と詠歎との間からジェルテルスキーが得た知識は、マリーナ・イワーノヴナが、夫のエーゴル・マクシモヴィッチと激しい夫婦喧嘩をしたこと、その原因はエーゴル・マクシモヴィッチがマリーナから借りて返さない三百円の金にあるこ・・・ 宮本百合子 「街」
・・・ 若さを喪失することにある悪は、フランスの貴族的な女詩人マダム・ノアイユが詠歎したような哲学的な哀愁ではなくて、きわめて現実に人間の善意に対して無反応になったり、嘲笑的になったりすることである。 どうせこんなものといってしまえば、そ・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
・・・ 藤村における「詠嘆的、慷慨的」なものを詩人的稟質と貴方は書いておられますが、どうかしら。こういうものは藤村が自身の教養と生活の道とを、所謂心も軽く身も軽き学生生活でのみ得ず、自力で自身の肉体でものにして来ているところからも生じているの・・・ 宮本百合子 「「夜明け前」についての私信」
・・・人間には感心しない物を感心したらしく詠嘆する能力がある。少しく感心したものをひどく感心したらしく言い現わす能力もある。人によれば自分の感じたことをわざと抹殺しようとする習慣をさえ持っている。あるいはほとんど無意識に自分の感じた事の真相から眼・・・ 和辻哲郎 「創作の心理について」
出典:青空文庫