・・・ 私は暖い篝火の囲りに円座を組み、神代の人達が、一日の行業について、各覚えた何ものかを語り合うように異った境遇、個性によって得たところに就て語り合いたく思います。 二 人間の生存過程を、学として研究し或・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
・・・この舟の中で、罪人とその親類の者とは夜どおし身の上を語り合う。いつもいつも悔やんでも返らぬ繰り言である。護送の役をする同心は、そばでそれを聞いて、罪人を出した親戚眷族の悲惨な境遇を細かに知ることができた。所詮町奉行の白州で、表向きの口供を聞・・・ 森鴎外 「高瀬舟」
・・・しかも我々はこの一文において直接に著者自身と語り合う思いがある。悠々たる観の世界は否定の否定の立場として自他不二の境に我々を誘い込むのである。 和辻哲郎 「『青丘雑記』を読む」
・・・ここに集められた能面は実物を自由に見ることのできないものであるが、写真版として我々の前に置かれて見ると、我々はともどもにその美しさや様式について語り合うことができるであろう。この機会に自分も一つの感想を述べたい。 今からもう十八年の昔に・・・ 和辻哲郎 「能面の様式」
出典:青空文庫