・・・向こうは大きな黒い壁になっていて、そこにたくさんの白い線が引いてあり、さっきのせいの高い目がねをかけた人が、大きな櫓の形の模型をあちこち指さしながら、さっきのままの高い声で、みんなに説明しておりました。 ブドリはそれを一目見ると、ああこ・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
・・・愛と平和――それは今の経済学、哲学とかの学問で説明したり、解剖したりする論理としての論理でなく、皆の分かり切った常識として、人間の生活に自由なものとなって来たら、愉快なことだと思います。〔一九二五年六月〕・・・ 宮本百合子 「愛と平和を理想とする人間生活」
・・・こういう時の木村の心持は一寸説明しにくい。この男は何をするにも子供の遊んでいるような気になってしている。同じ「遊び」にも面白いのもあれば、詰まらないのもある。こんな為事はその詰まらない遊びのように思っている分である。役所の為事は笑談ではない・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・及び感性能力の貧弱な人々にまでも明確に了解させねばならぬそれほども、私は私自身の独断的表現を圧伏させ、文学入門的詳細な説明をしていることは、月評としては赦されない。だが、私は自分の指標とした感覚なるものについて今一度感覚入門的な独断論を課題・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・従って多くを示唆する少ない語の代わりに、少なくを説明しようとする多くの語がある。しかも熱に浮かされた自分にはその空虚が充溢に見えるのである。 大業にし過ぎるということは若い者にあり勝ちの欠点かも知れない。重大事を重大事として扱うのに不思・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
出典:青空文庫