・・・二課業がすんでキッコがうちへ帰るときは雨はすっかり晴れていました。あちこちの木がみなきれいに光り山は群青でまぶしい泣き笑いのように見えたのでした。けれどもキッコは大へんに心もちがふさいでいました。慶助はあんまりいばってい・・・ 宮沢賢治 「みじかい木ぺん」
・・・ ――あのひとたち、一日何時間ずつ課業があるんです? ――四時間から、日によっては六時間です。 ブラブラ明るい階段の方へ向って歩きながら、答えた。 ――あの人たち、みんなここの寄宿舎に暮しているんです。汽車賃を貰って来て、無・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・僅か一時間の課業ではあったが、講義の一回毎に、頭が蓄る知識で重くなるようにさえ感じた。窮屈な文部省の綱目に支配された女学校の課程の中で、教育だけは先生の自由にまかされていたと見え、飢え饑えていた若い知識慾が、始めて満される泉を見出したのであ・・・ 宮本百合子 「弟子の心」
・・・一日おき位に、放課後一時間か二時間いのこり、算術や国語の特別課業を受ける時も、一つの読み間違い、一つの式の立て違いが、何だか、みな遠い彼方で、入学試験の間違いと連絡していそうな気がする。 私は、他の多くの友達と一緒に受持の先生がいられな・・・ 宮本百合子 「入学試験前後」
出典:青空文庫