・・・ ルポルタージュの問題と共に、必然的に歴史的諸相の評価の課題が、甦って来ざるを得ないというのは、何と微妙な現実であろう。それに関連する創作方法の問題として、リアリズムの実践も深めなければならなくなって来るのである。 平和が齎されたと・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・けれども、いまやっと、人間の基本的人権の確立がいわれるようになったとき、日本の知識階級の若い女性たちは、自分たちめいめいの運命の開花の問題として民主主義社会建設の課題を、どのように真剣にとりあげはじめているであろうか。自分の才能の達成と、愛・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・る気持とを互に知りあい信じあうこと、そして遺憾のない人間の生き方が、一つでも殖える可能のある社会条件を自分たちの一生のうちにつくってゆこうとする協力、人間は歴史的な存在であるから、私たちの協力も歴史の課題から抜け出ることはない。世界が連合国・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・の中で最も中心的に語られたのは、この協力の課題であった。けれどもあの時には人々の心にそれは特殊なものとしてうけ取られていた。 今日新しい社会的な環境の中で、両性の協力ということを友情や、恋愛の感情の基本にあるものとして、一般がとり上げ初・・・ 宮本百合子 「あとがき(『幸福について』)」
わたしたちが文学を愛するこころもちの最も純粋な情熱は、いつも、その作品をよみ、それを書いた作家に心をひかれる人々自身の、いかに生きるか、の課題に関連している。過去の文学作品、また今日かかれている作品をよみ、作家について研究・・・ 宮本百合子 「あとがき(『作家と作品』)」
・・・こんにちの社会で、理性ある平和を愛し、人間の尊重と発展とを願うひとは、ヒューマニティの課題として自身の幸福への欲求をも自覚しずにいられないのだから。 そこにこそ、このひとつらなりの長篇に力を傾ける作者の歓喜と信頼がかくされている。「二つ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『二つの庭』)」
・・・蔵原惟人・青野季吉その他の人々によって、芸術の階級性ということが主張され、文学の社会性の課題がとりあげられていた。文学様式としては、第一次大戦後のドイツにおこった表現派、ダダイズムが流行的であった。 無産派文学の運動――すべての国で人民・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第三巻)」
・・・この一巻に集められている二十数篇の評論、批評は、理論的に完成されていない部分や、展開の不十分な面をふくんでいるにもしろ、日本の人民階級の文学、人間解放のため文学がもっている基本課題をとりあげ、それを正当に推進させようとする努力において、ちっ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・文学は、当時の軍人、官吏、実業家の中心問題をその中心課題とすべきだという「大人の文学論」。客観的には、批判の精神を否定して、「知らしむべからず、よらしむべし」の全体主義文化政策に知識人が屈従するための合理化となった「文化平衡論」。「文学の非・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・だが、私は自分の指標とした感覚なるものについて今一度感覚入門的な独断論を課題としてここで埋草に代えておく。感覚と新感覚 これまで多くの人々は文学上に現れた感覚なるものについて様々な解釈を下して来た。しかしそれは間違いではない・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫