・・・すなわち振動体の減衰するエネルギーを弓の仕事で補給する、その補給の回数と適当な位相とを振動体の振動自身が調節するというのである。この点では実際ラジオなどに使う真空管とよく似た場合である。 しかしこれだけの説明で満足しないでもう一歩深く立・・・ 寺田寅彦 「日常身辺の物理的諸問題」
・・・光線に対しては乳色ガラスのランプシェードのように光を弱めずに拡散する効果があり、風に対してもその力を弱めてしかも適宜な空気の流通を調節する効果をもっている。 日本の家は南洋風で夏向きにできているから日本人は南洋から来たのだという説を立て・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・だから昔のような理想の持ち方立て方も結構であるかも知れぬが、また我々も昔のようなロマンチシストでありたいが、周囲の社会組織と内部の科学的精神にもまた相当の権利を持たせなければ順応調節の生活ができにくくなるので、自然ナチュラリスチックの傾向を・・・ 夏目漱石 「文芸と道徳」
・・・二千倍という顕微鏡は、数も少くまたこれを調節することができる人も幾人もないそうです。いま、一番度の高いものは二千二百五十倍或は二千四百倍と云います。その見得るはずの大さは、 〇、〇〇〇一四粍 ですがこれは人に・・・ 宮沢賢治 「手紙 三」
・・・これに対して、物価調節、各家庭に対する節約宣伝のような、やや消極的方面の問題、また積極的には女性の自給自立、労銀等の問題から、根本に近い、社会主義上の諸問題が、惹起されます。これ等は、おもに流動する貨幣のみちびきかた、適当な配分を考究して、・・・ 宮本百合子 「男…は疲れている」
・・・N・H・Kでさえも主婦の労働と、職業上の労働とをどう調節するかということについて社会の窓で放送しました。 女性の人間的・社会的自覚がたかまれば、仕事のない男がないように、女の仕事が家庭の中だけでおわるとは考えなくなってくるのは当然です。・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・その結果が、第一次大戦の根本原因であったそれぞれの国の資本主義による生産事情・社会機構の矛盾の調節という現実問題に帰着して、一九一七・一八年に、多くの国々で古い権力の形がくずれた。ロシアのツァーリズムの絶対主義政治、ドイツのカイゼルの軍国主・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・然し、次第に調節がつき、物価が下落して来るにつれて、左様云う人々は、段々市内に戻って来たらしい。不便な処へ、盗難は保証されない。その上、可成、田舎らしくない金をとる家は、しめる、曲るで病気にもなりかねない。住む人に見すてられたような住宅は、・・・ 宮本百合子 「又、家」
・・・産後のやつれは見せているが、一様に穏やかな満足げな目附をした母親たちが、カーテンで程よく外光を調節した寝台に休んでる。或るものは起きかえり、自分のダブダブな上っぱり姿を眺めて笑っている。 赤坊たちは、母親とは別室だ。ズラリと揺籃を並べ、・・・ 宮本百合子 「モスクワ日記から」
・・・それ故にこそ、母性の保護として、子供たち自身の幸福のために、科学的な調節の自由はなければならない。私たち婦人は、現支配者たちがひきおこした戦争惨禍の責任を糊塗しようとして、政府の無能を彌縫しようとして、云々する産児制限に、決して無条件に母な・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫