・・・婦人部維持費五銭積立の件、××さん出産祝の件、組合内に購買組合を組織する件、日頃の団結の強さと未来の勝利への確信が何とも云えない熱となってこの屋根の下に燃え輝いている。 × 翌朝は日が出ると間なし起床だ。 いい天気で、朝靄が・・・ 宮本百合子 「飛行機の下の村」
・・・ 婦人たちがますます本を買って読みながら、自分たちの生きている歴史の意義や女の生活のおくれを自覚してゆく活溌能動の心情を失う方向へばかり導かれているとしたら、購買力として婦人の数の増大することはとりもなおさず、文学なら文学作品の商品化に・・・ 宮本百合子 「婦人の読書」
・・・生活と作家の内的世界との統一のことはいわれないで、これまでそれ等の作家・評論家たちが、一握りの知識人として庶民のくらしとは隔絶した日常のなかで語り書きして来た文学的所産の単なる読者として、その消費者、購買者としての多数人へ示された関心であっ・・・ 宮本百合子 「平坦ならぬ道」
・・・会社と会社が互にきそうその広告、宣伝術に対して、購買者たる市民の側の選択も、発達している。主婦は自分の生活のほんとの必要にたって、一つの罐づめでも選ぶ。そういう選択、判断がなかったらアメリカの貯蔵食品の今日の発達と品質の向上はあり得なかった・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・銀座その他には数千円の贅沢品があふれていて、飛ぶように売れているが、生活必需品の購買力はガタ落ちだと、はっきりいっている。新しいナベがいる、ほうきがいる。ほうき一本三百円もする。「ほうきがほしいわねえ」という主婦の言葉はそれが買いにくいから・・・ 宮本百合子 「ほうき一本」
・・・ こういう細かい生活の実況であるにもかかわらず、総体としてラジオが益々大勢にきかれるようになって来ることには、一方で、出版物の高騰、書籍購買力の低下と伴い、一方では確に放送局で着眼しているとおりニュース価値の増大にあるだろうと思う。・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
出典:青空文庫