・・・ 赤みを帯びた卵色の地の色と、常緑樹と、軽い水色の空は、風景にふしぎな愛しみと暖かみを与える。とりのこされた綿の実が、白く見える耕地からゆるやかな起伏をもって延びて居る、色彩の多い遠景、近くに見ると、色絨壇のような樹々の色も、遠くなるに・・・ 宮本百合子 「無題(二)」
・・・ことに愛らしい。ことに赤みの勝った、笠を開かない、若い初茸はそうである。しかし黄茸の前ではどうも品位が落ちる。黄茸は純粋ですっきりしている。が、白茸になると純粋な上にさらに豊かさがあって、ゆったりとした感じを与える。しめじ茸に至れば清純な上・・・ 和辻哲郎 「茸狩り」
・・・芽の色に赤味が勝っていた樹は、紅葉の時の赤みも濃い、というような関係も目立ったが、また芽の出の最も遅かった樹がまっ先に紅葉するというような、逆の関係も目についた。年によると、この相違が非常に強く現われ、早い樹はもう紅葉が済んで散りかけている・・・ 和辻哲郎 「京の四季」
出典:青空文庫