・・・まだすっかり出来上らないで頂上に赤旗がひるがえっていた。 十月三十日。 午後一時、ニージュニウージンスクへ止る一寸前、ひどい音がして思わず首をちぢめたら自分の坐っていたすぐよこの窓ガラスの外一枚が破れている。 ――小僧!・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・「スモーリヌイに翻る赤旗」そのほかは、かえって来てから一九三一年にかかれている。「ピムキン、でかした!」は、その年のはじめに日本プロレタリア作家同盟へ参加してから、農民文学のための雑誌『農民の旗』へかいたものだと思う。小説の形をとっているけ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・ 強烈なアーク燈に照らされ、群像の上にひるがえる幾流もの赤旗は夜に燃える火のようだ。左手につづく国立物品販売所の正面には、イルミネーションで、万国の労働者団結せよ!と、書き出されている。 広場の土は数十万の勤労者の足・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・此方ではカフェー・パリスと赤旗がひらひらしている。市民の遊覧、ルウソーの絵の感じであった。陽気で愛らし。 溺死人の黒い頭、肩。人間の沢山いる棧橋の方へ、何か魂の引力みたいなもので漂って来まいかといいようなくこわかった。その傍を通り過た漁・・・ 宮本百合子 「狐の姐さん」
・・・は、翻る赤旗とともに、すべてこういうプロレタリア、農民への重石をはねのけ、猛然と文盲撲滅をはじめた。工場の中、兵営の中、農村、町、ソヴェトの中、教会の中をもいとわず、共産青年同盟員やピオニェールが、アルファベットのカードをこしらえて、七十の・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・うねくる個人耕作の細い畦が消えて、そこに赤旗をかかげた農業機械ステーションを中心とする集団農場が現われた。 重工業の発展はソヴェトの尨大な野を統制ある農業生産場、工業原料の生産場とかえつつある。農村の活溌な社会主義的発達はとりもなおさず・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 特徴的に狭い額に、深い横皺のある賤しい顔つきをした男は警視庁と印刷のしてあるケイ紙を出し、そこへ、 赤旗 共青 資金関係 そんな風な項目を書き並べた。「サア、いつから赤旗を読んでる!」 自分はそういうもの・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・円屋根にひるがえる赤旗は、まわりを古風な建物がとりかこんでいるだけかえって新鮮で、光る白い雲の下で夏の歓びにあふれている。 クレムリンの城壁が終ったところに細い通りがあって―― ソラ! ここだ、労働宮というのは。 モスクワ河岸を・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・幾条もの赤旗で飾られた正面玄関の石段に立って、群集と一緒に街の上手を見渡すと、来るゾ! 来るゾ! 赤旗につづく赤旗の波だ。 六列横隊で、自分達の工場音楽隊を先頭にして、行進曲と共にやって来る。愉快そうで、整然としていて、胸も躍る光景・・・ 宮本百合子 「勝利したプロレタリアのメーデー」
・・・湯呑の一つに赤旗を背景に麦束をかこんだ鎌と鎚の模様がついていて、黒い文字で「万国のプロレタリアート、結合せよ!」 ネ河のはやいひろい音のない流れでめまいしそうなのは表側――河岸通に向った室だけだった。壁画のある、天井の高い大食堂の窓から・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
出典:青空文庫