・・・テヘラン、イスパハンといったようないわゆる近東の天地がその時分から自分の好奇心をそそった、その惰性が今日まで消えないで残っているのは恐ろしいものである。「団々珍聞」という「ポンチ」のまねをしたもののあったのもそのころである。月給鳥という鳥の・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・うにかしようという非望を企てるわけにも行かないわけであるが、それでもただやみがたい好奇心から、余暇あるごとに少しずつ、だんだんに手近い隣接国民の語彙を瞥見する事になり、それが次第次第に西漸していわゆる近東から東欧方面までも、きわめて皮相的な・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・一九四一年十一月より五ヵ月ばかり、連合軍側の戦時特派員という資格で、アフリカ、近東、ソヴェト同盟、インド、中国を訪問し、ファシズム、ナチズムに対して民主主義をまもろうとする国々のたたかいの姿を報道した。「ポーランドに生れ、フランスに眠るわが・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・では、素朴な古代人の感情、行動、近東の絵画的風俗などに少なからず作者の感興がよせられている。エクゾチシズムが濃い。しかしテーマは、古代ペルシアの王と諸公の運命を支配していた封建的な関係。同じ社会的な条件で、その愛も全うされなかった男女、その・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・で作者は、古代の近東の封建的な武人生活の悲劇を描こうとしている。人間らしい父と子の情愛の表現にさえ、彼等は生活のしきたりから殺伐な方法をとるしかなく、しかも、その殺伐さをとおして流露しようとする人間らしい父と子の心情を、彼等の支配者が利己と・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・ 近東の少数民族の大衆は、灼けつく太陽の熱や半年もつづく長い冬の中で原始的な手工業、地方病と、封建的地主、親方の二重の搾取の下で、極めておくれた文化をもっていた。 自国語で読み書きすること、著作すること、芝居することまでを禁止され、・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・けれども目の下の旧市街は低い近東風の平屋根の波つづきで、平屋根の上には大小の壺が置いてあるのなども見えるのである。渋っぽい、うるしのような匂いのする露路へ入ると、ぎっしり並んだ箱の蓋をあけたように種々様々の韃靼人の店があった。ロシア語で「食・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・パレスタインに英国軍用機駐屯所を持つことは近東及印度に対していい押えだ。ルッテンベルグ協約で英国はヨルダン水力電気利権を得た。死海協約でおよそ八十億ポンドの塩を英国は死海から儲けるであろう。パレスタインで農業をしていた先住アラビア人は多く土・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫