近ごろ近ごろ、おもしろき書を読みたり。柳田国男氏の著、遠野物語なり。再読三読、なお飽くことを知らず。この書は、陸中国上閉伊郡に遠野郷とて、山深き幽僻地の、伝説異聞怪談を、土地の人の談話したるを、氏が筆にて活かし描けるなり。・・・ 泉鏡花 「遠野の奇聞」
・・・東の仙人峠から、遠野を通り土沢を過ぎ、北上山地を横截って来る冷たい猿ヶ石川の、北上川への落合から、少し下流の西岸でした。 イギリス海岸には、青白い凝灰質の泥岩が、川に沿ってずいぶん広く露出し、その南のはじに立ちますと、北のはずれに居る人・・・ 宮沢賢治 「イギリス海岸」
「ガタンコガタンコ、シュウフッフッ、 さそりの赤眼が 見えたころ、 四時から今朝も やって来た。 遠野の盆地は まっくらで、 つめたい水の 声ばかり。 ガタンコガタンコ、シュウフッフッ、 ・・・ 宮沢賢治 「シグナルとシグナレス」
出典:青空文庫