・・・が、この似たのは、もう一人の丸髷の方が、従弟の細君に似たほど、適格したものでは決してない。あるいはそれが余りよく似たのに引込まれて、心に刻んだ面影が緋縮緬の方に宿ったのであろうも知れぬ。 よし、眉の姿ただ一枚でも、秦宗吉の胸は、夢に三日・・・ 泉鏡花 「売色鴨南蛮」
・・・特務曹長「然るに私共は未だ不幸にしてその機会を得ず充分適格に閣下の勲章を拝見するの光栄を所有しなかったのであります。」大将「それはそうじゃ、今までは忙がしかったじゃからな。」特務曹長「閣下。この機会をもちまして私共一同にとくとお・・・ 宮沢賢治 「饑餓陣営」
・・・ 斎藤国警長官の進退をめぐって政府と公安委員会が対立し、公安委員会は斎藤氏の適格を主張し、ついに、政府は静観となった。この事件も、下山氏の死にからんで強行されようとした何かの政界の失敗であり、この失敗そのものが、逆に下山氏の死の微妙ない・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
出典:青空文庫