・・・Stilling 教授が挙げているトリップリンと云うワイマアルの役人の実例や、彼の知っている某M夫人の実例も、やはり、この部類に属すべきものではございませんか。 更に進んで、第三者のみに現れたドッペルゲンゲルの例を尋ねますと、これもまた・・・ 芥川竜之介 「二つの手紙」
京橋区三十間堀に大来館という宿屋がある、まず上等の部類で客はみな紳士紳商、電話は客用と店用と二種かけているくらいで、年じゅう十二三人から三十人までの客があるとの事。 ある年の五月半ばごろである。帳場にすわっておる番頭の・・・ 国木田独歩 「疲労」
・・・散髪を怠らず、学問ありげな、れいの虚無的なるぶらりぶらりの歩き方をも体得して居た筈でありますし、それに何よりも泥酔する程に酒を飲まぬのが、決定的にこの男を上品な紳士の部類に編入させているのであります。けれども、悲しいかな、この男もまた著述を・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・ その辺の応答までは、まず上出来の部類なのであるが、あと、だんだんいけなくなる。しどろもどろになるのである。「どう思います、このごろの他の人の小説を、どう思います。」と問われて、私は、ひどくまごつく。敢然たる言葉を私は、何も持ってい・・・ 太宰治 「鴎」
・・・僕にとっては、その当時こそ何かと不満もあったのであるが、いまになって考えてみると、あの技師にしろ、また水泳選手にしろ、よい部類の店子であったのである。俗にいう店子運がよかったわけだ。それが、いまの三代目の店子のために、すっかりマイナスにされ・・・ 太宰治 「彼は昔の彼ならず」
・・・けれども、この作品は、日本では、いいほうの部類なのではあるまいか。わりに嘘のない、静かな諦めが、作品の底に感じられてすがすがしい。この作者のものの中でも、これが一ばん枯れていて、私は好きだ。この作者は、とっても責任感の強いひとのような気がす・・・ 太宰治 「女生徒」
・・・と乳母に打ち明ける恋いわずらいの令嬢も、この数個のほうの部類にいれて差し支えなかろう。 太宰もイヤにげびて来たな、と高尚な読者は怒ったかも知れないが、私だってこんな事を平気で書いているのではない。甚だ不愉快な気持で、それでも我慢してこう・・・ 太宰治 「チャンス」
・・・私は第二国民兵の、しかも丙の部類であるから、その時の査閲には出なくてもよかったらしいのであるが、班長にすすめられて参加したのだ。服装というものは不思議なもので、第二国民兵の服装をしていると、どんな人でも、ねっからの第二国民兵に見えて来るもの・・・ 太宰治 「鉄面皮」
・・・と称するものは従来文学の世界の片すみの塵塚のかたわらにかすかな存在を認められていたようである。現在でも月刊雑誌の編集部では随筆の類は「中間物」と称する部類に編入され、カフェーの内幕話や、心中実話の類と肩をならべ、そうしていわゆる「創作」と称・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ほうの aprpya, apurva でも、やはり日本式ローマ字で書くと p+r+b(m) の部類にはいる。これらはサンスクリトとしてはきわめて明白に、それぞれ全く異なる根幹から生じたものであるのに、音のほうではどこか共通なものがあり、同時・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
出典:青空文庫