・・・人間関係を大切に思い評価しあう心が根源をなしている友情で、それが異性の間にある場合、私たちはそれぞれのひとの配偶としての同性に対して、友の生きかたを尊敬する意味において十分鄭重であるのが自然だと思う。同性の友情が、常にその友の対手である異性・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
・・・人間は、より高大な、啓発された生活へ自分の霊を育てる為の助力者、試金石、として、先ず最も自分に近く、最も自分の負うべき自明の責任の権化である配偶を持たずには居られない本能を有するのではないか。 少くとも、自分は自分の結婚に対して、以上の・・・ 宮本百合子 「黄銅時代の為」
・・・ 勿論、配偶者の如何によって、其は明である。 宮本百合子 「結婚に関し、レークジョージ、雑」
・・・それにそのひとは、自分の感情に結婚はまだわかっていないから、分るまで待って結婚したいと思っているのではなくて、いずれ両親の見出してくれる適当な配偶者と結婚するだろうということは明言しているのであった。 親の見出してくれた配偶者と結婚して・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・三十三という年ごろも、女の生涯からみれば、何かそこに配偶の年や生活環境ということからもかかわって来る様々の変化が予想されないものでもないのかもしれない。日本のしきたりでは、良人と妻とは七つ八つ年が違うのが普通だから、その年ごろの妻たちは大体・・・ 宮本百合子 「小鈴」
・・・ 戦争によって配偶を失った女の人たち、その家族を失った子供たちのために、「救済」という形が考えられているうちは、たとえそれが部分的にかなりゆきとどいた方式でされようとも、世界人類の頭上を不吉なはげたかのように舞っている不幸の本質がとりの・・・ 宮本百合子 「『この果てに君ある如く』の選後に」
・・・マリンスキーの舞踊手でどこか他の強靭な子宮の配偶者であった。――――こんな例、人工流産の失敗する例は沢山ありますか――パーセントは少いがあることはあります。一度の人工流産は大したことはない。三度 四度、モスクの女がやるようにしては全・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・ 昔の日本人は、封建の柵にはばまれて、心に思う人と、親のきめた配偶者とはほとんど常に一致しなかった。現在は、菊池寛氏のように恋愛を広義の遊蕩、彼のいわゆる男の生物的多妻主義の実行場面と見、結婚を市民的常識にうけいれられた生殖の場面、育児・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・的背景も権利も無いままに、どんな不安な身のゆく末を思い煩わなければならなかったか、又そこから脱出しようとして、それぞれの才智に応じて、いろいろと進歩の機会を捉える工面をして、せめてその関係に安定のある配偶を見つけようとし、或は宮廷に入ろうと・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・ そこに於てこそ、自分が苦しみ、悦びしつつ経て行く生活過程に絶対無二な意義を感じ得るとともに、近くは親同胞、配偶者、あらゆる友、生きている者全部の営みに、尊敬と理解、同感を持ち得るのではないでしょうか。 私は暖い篝火の囲りに円座を組・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
出典:青空文庫