・・・尤もある画を見ると色彩については線法や構図に対するほどの苦心はしていないかと思われるのもないではないが、しかし簡単な花鳥の小品などを見ても一見何らの奇もないような配色の中に到底在来の南画家の考え及ばないと思われる創見的な点を発見する事が出来・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・服装についてセンスというのは、ただ単純に配色、アクセントなどについてだけ語られるものだろうか。そうは思えない。やつれた体に粉飾してアクセントをつけたとして、それがよいセンスだろうか。美しさの基本に私たちは健康をもとめる。健康な体に、目的にか・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・ 時々三対目の後脚をいかにもかゆそうにこすり合わせた、見て居て、自分もくすぐったくなる程〔欄外に〕 よく見るとうるしの刷目のようなむらさえ頭や翅にあり、一寸緑色がぼやけて居るあたりの配色の美、 田舎の寺の・・・ 宮本百合子 「一九二七年八月より」
・・・ ○枯木雪につつまれた山肌 茶と色との配色 然し女性的な結晶のこまかさというようなものあり ○山と盆地 ○下日部辺の一種複雑な面白い地形 然し小さし ○信州に入ると常磐木が多い。山迚も大きい感。常磐木があるので黒と白の配色。・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・ 近頃のけばけばしさ、というと普通にはすぐ懐古風に配色だの縞だのが思い浮べられているけれども、そういう逆もどりも実際には不可能だと思う。 しぶい色、縞は、昔の日本の室内で近い目の前で見られるにふさわしいのだが、今日の東京の建築物では・・・ 宮本百合子 「働くために」
・・・日本のなごやかな錦の配色など――金地に朱、黄、萌黄、茶、緑などあしらった――は、斯那自然の色調から生れたものと思う。蜜柑、橙々の枝もたわわに実ったのを見たら、岡本かの子の歌を連想した。南画的樹木多し。私達の部屋の障子をあけると大椎樹の下に、・・・ 宮本百合子 「湯ヶ島の数日」
出典:青空文庫