・・・北海道歌志内の鉱夫、大連湾頭の青年漁夫、番匠川の瘤ある舟子など僕が一々この原稿にあるだけを詳しく話すなら夜が明けてしまうよ。とにかく、僕がなぜこれらの人々を忘るることができないかという、それは憶い起こすからである。なぜ僕が憶い起こすだろうか・・・ 国木田独歩 「忘れえぬ人々」
・・・ 斉田もはっきり目をあいていて低く鉱夫だなと云った。富沢は手をふって黙っていろと云った。こんなときものを云うのは老人にどうしても気の毒でたまらなかった。 外ではいよいよ暴れ出した。とうとう娘が屏風の向うで起きた。そしてとどうやらこっ・・・ 宮沢賢治 「泉ある家」
・・・それにおれには鉱夫どもにさえ馬鹿にはされない肩や腕の力がある。あんなひょろひょろした若造にくらべては何と云ってもおみちにはおれのほうが勝ち目がある。(おみち、ちょっとこさ来嘉吉が云った。 おみちはだまって来て首を垂れて座った。(・・・ 宮沢賢治 「十六日」
托児所からはじまる モスクはクレムリとモスク河とをかこんで環状にひろがった都会だ。 内側の並木道と外側の並木道と二かわの古い菩提樹並木が市街をとりまき、鉱夫の帽子についている照明燈みたいな※と円い・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
出典:青空文庫