・・・まったので、やけになり世にすねたあげく、いっそこの世を見限ろうとしたこともあるが、五年後の再会を思いだしたので、ふたたび発奮して九州へ渡り、高島、新屋敷などの鉱山を転々とした後、昨年六月から佐賀の山城礦業所にはいって働いているが、もしあの誓・・・ 織田作之助 「アド・バルーン」
・・・ 三代目の横井何太郎が、M――鉱業株式会社へ鉱山を売りこみ、自身は、重役になって東京へ去っても、彼等は、ここから動くことができなかった。丁度鉱山と一緒にM――へ売り渡されたものゝ如く。 物価は、鰻のぼりにのぼった。新しい巨大な器械が・・・ 黒島伝治 「土鼠と落盤」
・・・普通な農作のほかに製茶製糸養蚕のごときものも、鉱業や近代的製造工業のごときものに比較すればやはり庭園的である。風にそよぐ稲田、露に浴した芋畑を自然観賞の対象物の中に数えるのが日本人なのである。 農業者はまたあらゆる職業者の中でも最も多く・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・特に電気工業、機械、鉱業へ婦人の進出はこの頃ソヴェト同盟の目立った現象だ。 社会主義社会で、つまり男女同一労働に対して同一賃銀を実施し、しかも現実的な母性保護が完全に行われるところでこそ、男女共学が本ものとして行われるのは自明なことだ。・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
・・・られたドイツの軍人たちの傷けられた名誉心と結合させ、ドイツ民族の名誉恢復、復讐の期待というものを、不幸なドイツの人々の心にしみこませて行ったのが、第一次大戦のときに生れたドイツの軍需成金、科学・工業・鉱業界の親玉たちであった。そこへこの舞台・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
出典:青空文庫