・・・その以前から長姉の片付いていたB家が三軒置いた隣りにあって、そこには自分より一つ年上の甥が居たから、自分の幼時の多くの記憶はこの姉の家と自宅との間の往復につながっている。それと、もう一つ、宅の門脇の長屋に住んでいた重兵衛さんの一家との交渉が・・・ 寺田寅彦 「重兵衛さんの一家」
亮の一周忌が近くなった。かねてから思い立っていた追憶の記を、このしおに書いておきたいと思う。 亮は私の長姉の四人の男の子の第二番目である。長男は九年前に病死し、四男はそれよりずっと前、まだ中学生の時代に夭死した。昨年ま・・・ 寺田寅彦 「亮の追憶」
・・・家には、ヒルダと長姉のアンナが残ることになったのですが、ロザリーは、そのアンナと毎晩一緒の室に眠らなければならないのが堪りませんでした。 元から、アンナは、姉妹の中でのけ者にされ自分も意地を張って妹達と親しみませんでした。フロラとヒルダ・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
出典:青空文庫