・・・「本日は東北長官一行の出遊につきこれより中には入るべからず。東北庁」 私はがっかりしてしまいました。慶次郎も顔を赤くして何べんも読み直していました。「困ったねえ、えらい人が来るんだよ。叱られるといけないからもう帰ろうか。」私が云・・・ 宮沢賢治 「二人の役人」
・・・たちまち道の右側に、その粘土作りの大きな家がしゃんと立って、世界裁判長官邸と看板がかかって居りました。「ご免なさい。ご免なさい。」とネネムは赤い髪を掻きながら云いました。 すると家の中からペタペタペタペタ沢山の沢山のばけものどもが出・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・座談会はロイヤル長官の談話そのほかいくつかのトピックで進められているが「切迫せる人口問題」のくだりで、鈴木文史朗氏はいっている。一年に百万ずつもふえている日本の人口問題の解決法がゆきづまっている。「理想的なやりかたは、ひと思いに何千万を殺す・・・ 宮本百合子 「鬼畜の言葉」
銀座の通りを歩いていたらば、一つの飾窓の前に人だかりがしている。近よって見るとそこには法廷に立っているお定の写真が掲げられているのであった。 数日前には、前陸軍工廠長官夫人の虚栄心が、良人の涜職問題をひきおこす動機とな・・・ 宮本百合子 「暮の街」
・・・ところが行政機構の変革をチャンスとして政府は従来の用紙割当委員会さえも無視して、ただ一人の長官が決定権をもつ用紙割当事務庁というものを創設しようとしている。世論は当然反対し、ひとまず現在の内閣直属の用紙割当委員会の自主的権限を認めるところま・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・更に、政府は、用紙割当事務庁をつくり、その長官が用紙割当事務に対して独占の権力をもつようにしようとしている。もちろんこの場合にも文化材である用紙割当の公正と民主性がいわれているが、主務大臣の野溝はいちはやく利害関係のある地方新聞に対して、い・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・ 斎藤国警長官の進退をめぐって政府と公安委員会が対立し、公安委員会は斎藤氏の適格を主張し、ついに、政府は静観となった。この事件も、下山氏の死にからんで強行されようとした何かの政界の失敗であり、この失敗そのものが、逆に下山氏の死の微妙ない・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
十二月二十六日の午後、毎日新聞社から電話がかかって来た。そして、経済安定本部長官和田博雄が、二十三年度の勤労者のための経済白書を出したから、それについて意見をききたいということだった。わたしは経済について専門の知識はない。・・・ 宮本百合子 「ほうき一本」
・・・その心もちをたいへん巧みに捕えて、片山哲氏は首相になると早々街頭録音に出かけるし、新橋のきわで安井都長官が芋苗を売る手伝いをするし、大変親しみ易い政府がはじまったようです。小包米とか赤ん坊の牛乳、姙産婦用ラードの配給、これは根本的な食糧問題・・・ 宮本百合子 「本当の愛嬌ということ」
・・・そのあわただしい中に、地方長官の威勢の大きいことを味わって、意気揚々としているのである。 閭は前日に下役のものに言っておいて、今朝は早く起きて、天台県の国清寺をさして出かけることにした。これは長安にいたときから、台州に着いたら早速往こう・・・ 森鴎外 「寒山拾得」
出典:青空文庫