・・・ブルジョアジーをなくするためには、この階級が自己防衛のために永年にわたって築き上げたあらゆる制度および機関をプロレタリアの手中に収め、矛を逆にしてブルジョアジーを亡滅に導かねばならぬ。ブルジョアジーが亡滅すれば、その所産なるすべての制度およ・・・ 有島武郎 「広津氏に答う」
・・・ 夜業禁止や、時間制により、工場はある不幸な児童等は救はれたのであるが、尚、眼に見えざる場処に於ての酷使や、無理解より来る強圧を除くには、社会は、常に警戒し、防衛しなければならぬであろう。そして、積極的に彼等がいかなる、境遇に置かれつゝ・・・ 小川未明 「児童の解放擁護」
・・・それは、自己防衛する術を知らぬ、動物の報復について考えを要せぬからであります。それ故に、僅かに、神の与えた聡明と歯牙に頼るより他は、何等の武器をも有しない、すべての動物に対して、人間の横暴は極るのであります。 斯の如きことを恥じざるに至・・・ 小川未明 「天を怖れよ」
・・・君は、二言目には、貧乏、貧乏といって、悲壮がっているようだが、エゴの自己防衛でなかったら幸いだ。人に不義理はしていねえ、という事が唯一の誇りだとか言っているが、無理なつき合いはしたくねえ、というケチな言葉も、その裏にはありはしないか。自分は・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・卑劣な自己防衛である。なんの責任感も無かった。学生たちを怒らせなければ、それでよかった。私は学生たちの話を聞きながら、他の事ばかり考えていた。あたりさわりの無い短い返辞をして、あいまいに笑っていた。私の立場ばかりを計算していたのである。学生・・・ 太宰治 「新郎」
・・・アフリカでは食うことの不自由はないであろうからやはり生命の敵に対する防衛の便宜から自然に集団生活に慣らされたのか、それとも生殖の便宜からか、あるいはスポーツのためだか自分にはわからない。それはとにかくアフリカ映画でこれらのたくさんな動物の群・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・多くの人は、人間が野蛮と暴力に耐えがたいという自然な弱さで――それだからこそ人民は非人間的権力や戦争に反対してたたかうことを余儀なくされるのであるが――生の防衛の本能にみちびかれて、行動せざるを得なかった。 こんにち、いくらかひろげられ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・だが、民衆は、祖国の防衛として肉体をもってそれを感じ、そこに身を挺している。彼等灰色の人々に光栄あれ。 フランスの知識人は「政治」と「政変」とに飽きて、「政治」について妙に観念化された。 それがそこから離別することが人間的誠実とは思・・・ 宮本百合子 「折たく柴」
・・・然し人間的なまた社会的な悲劇の一つの典型と見た場合、法律の及ぶ範囲が必ずしも人間の悲劇、特に今日の社会で経済的にも精神的にも防衛の少い若い女の誠に落ち入り易い悲惨事の原因までを取り除く事が出来にくいと云う事を残念に思う次第です。また作者とし・・・ 宮本百合子 「「女の一生」と志賀暁子の場合」
・・・は、内閣が自分の防衛のために議会をベルリンから他の市へ移そうとするのに反対して、市民軍を支持して一つの檄を公表した。檄はマルクスと二人の同志とを叛逆罪として起訴する種に使われた。公判の結果、一同無罪となった。 これはイエニーにとって貴重・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
出典:青空文庫