・・・ 日本の降伏後、言論の自由、思想と良心と行動の自由があるようになったはずです。でもその現実は職場の人が日常の中によく知らされています。その全く同じものを民主主義文学者は、自分の職場において知っています。紙のないこと、割当が商業主義、事大・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・前年九月ワルソーに突入したナチス軍は四〇年の春ノルウェーに進出し、五月マジノ線を突破して一ヵ月の後フランスを降伏させていた。第二次ヨーロッパ大戦は次第にクライマックスに向いはじめた。日本の天皇制権力とその軍閥は目前のドイツファシズムの勝利に・・・ 宮本百合子 「年譜」
この往復書簡集三巻におさめられている宮本顕治・宮本百合子の手紙は、一九三四年十二月から一九四五年八月十五日、日本の無条件降伏後、治安維持法が撤廃されて、十月十日網走刑務所から顕治が解放されるまでにとりかわされた書簡、百合子・・・ 宮本百合子 「はしがき(『十二年の手紙』その一)」
・・・そして、多くの場合そのいずれもが、作家としての降服の旗じるしであることが自覚されている。「若い人」の終りにしろ、その本質は同じであるが、ずっと終りまで読み、本を伏せ、「麦死なず」「闘犬図」その他の作品にあった空気を思いおこし、つづいてこ・・・ 宮本百合子 「文学と地方性」
・・・日本近代社会がその推移の過程で引き裂いた文化面のこの無惨な亀裂を今日性急に主観的にとび越え、埋めようとするところから、或る意味では従来の反動として、市民的日常性への無条件降服のきざしが作家の間に生じている。この傾向は、特に、日本の文化が置か・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・ だから、一九四五年八月十五日、日本のファシズム権力が無条件降伏しポツダム宣言を受諾したのち、「聖戦」が帝国主義の侵略戦争であったといわれても、すぐそれを納得しかねる感情が大部分の人民の心にひそんでいる。その心持は今日も決して根絶してい・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・そして、一九四五年八月十五日無条件降伏を以てこの惨劇を終った。特に太平洋戦争が始まってから、我々日本の人民は、その戦争を大東亜戦争という名で呼ばされた。且つ「聖戦」と言い聞かされた。ところが敗戦してポツダム宣言を受諾した時、日本は連合諸国か・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・吾人は口に豪壮を語る輩が女々しく肉に降服せるを見て憐れまざるを得ない。吾人は社会に罪悪の絶えぬ以上校友の思想に欠点あるを怪しまぬ。ただ願わくばこの悪潮流が光栄ある四綱領を汚さざらん事を望むのである。・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫