・・・しかし我々は単に俳句の如きものの美を誇とするに安んずることなく、我々の物の見方考え方を深めて、我々の心の底から雄大な文学や深遠な哲学を生み出すよう努力せなければならない。我々は腹の底から物事を深く考え大きく組織して行くと共に、我々の国語をし・・・ 西田幾多郎 「国語の自在性」
・・・はるか左側に雄大な奥羽山脈をひかえ、右手に秋田の山々が見える。その間の盆地数十里の間、行けど、行けど、青々と茂った稲ばかりである。 関東の農村は、汽車でとおっても、雑木林をぬけたところには畑があり、そこでヒエが穂を出しているかと思うと、・・・ 宮本百合子 「青田は果なし」
・・・新しい躾の問題も、こういう広い、雄大な立場から考えられなければならないであろうと思います。 躾という字をみますと、美しく身をもつ、ことと思えます。美しく身を持した生活態度というのは、どういうことをさしていうのでしょう。 昔か・・・ 宮本百合子 「新しい躾」
・・・創作においてもわれわれがプロレタリア作家として互に要求しているだけ雄大で高度で、かついきいきとしたプロレタリアートの生活描写において大衆をすいよせるような作品は出ておらぬ。 だからといって作家同盟の方向が根本的に誤っているとか、または林・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ そして、初めはなんとなく弱く、あるいは数も少いその歌声が、やがてもっと多くの、まったく新しい社会各面の人々の心の声々を誘いだし、その各様の発声を錬磨し、諸音正しく思いを披瀝し、新しい日本の豊富にして雄大な人民の合唱としてゆかなければならな・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・の読者は、精彩にみち、実感にふれて来るこの雄大な一作をよんだのち、満足とともに何とはなし自分の体がもう一寸何かにぶつかる味を味ってみたかったような気分に置かれることはないだろうか。いかにも完成された作品であり、豊かな完璧な作品にちがいない。・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・ あの辺の海は濤がきつく高くうちよせて巖にぶつかってとび散る飛沫を身に浴びながら歌をうたうと、その声は濤の轟きに消されて自分の耳にさえよくきこえない。雄大な外洋に向って野島ケ崎の燈台が高く立っている下の浜辺にところどころ燃き火をして、あ・・・ 宮本百合子 「漁村の婦人の生活」
・・・ コーカサスの雄大極まりない山嶽を南へ縫ってウラジ・カウカアズから、スターリンの故郷チフリースまで、立派な自動車道が通っている。今日そこを走るのは、労働者・農民の陽気な観光客を満載した遊覧乗合自動車だ。が、道普請は、昔そのためにされたの・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ やがて我に還ると、私は、執拗にとう見、こう見、素晴らしい午後の風景を眺めなおしながら、一体どんな言葉でこの端厳さ、雄大な炎熱の美が表現されるだろうかと思い惑う。惑えば惑うほど、心は歓喜で一杯になる。 ――もう一つ、ここの特徴で・・・ 宮本百合子 「この夏」
・・・この複雑雄大なテーマと素材を、その隅々まで描写しつくしたらば、作品は現在あるより少くとも倍の長篇になるべきであった。才能と精力ゆたかな新人間ゴルバートフが十分の時間をもたなかったのは、くれぐれも残念だと思う。〔一九四六年九月〕・・・ 宮本百合子 「ゴルバートフ「降伏なき民」」
出典:青空文庫