・・・しかし、風流などというものはあわてて雑文の材料にすべきものではない。大の男が書くのである。いっそ蛍を飛ばすなら、祇園、先斗町の帰り、木屋町を流れる高瀬川の上を飛ぶ蛍火や、高台寺の樹の間を縫うて、流れ星のように、いや人魂のようにふっと光って、・・・ 織田作之助 「大阪の憂鬱」
・・・他の雑文は、たいてい断るつもりです。 その他、来春、長編小説三部曲、「虚構の彷徨。」S氏の序文、I氏の装幀にて、出版。 この日、午後一時半、退院。汝らの仇を愛し、汝らを責むる者のために祈れ。天にいます汝らの父の子とな・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・が、雑文「瓦職仁儀」や創作「養蚕地帯の秋」などは、地方の生産、それとの関係においての人々を描き、興味があった。文学のひろびろとした発展のために無規準な地方色の偏重は不健全におちいるのであるが、その地方の生産に結びついている大衆の文学的欲求と・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
出典:青空文庫