・・・「怖し羞し背広の車掌」「非常時運転がこぼすユーモア」「笑いをのせて」などと云う記事が面白可笑しく出ている。一方山下又三郎の名で「総罷業の首謀者四十五名に解傭を通告」という報道がある。今回の罷業に関し貴下を懲戒解傭の処分に附するの已む・・・ 宮本百合子 「電車の見えない電車通り」
・・・所謂非常時の暮しとしてそれが受けいれられているが、家庭とか妻とかいうものについての根本の考えかたには変化ないように思われる。根本に変化はないままに、家庭の女といえどもより働くのが当然という感じかたが加わって来ていると思う。 働く女という・・・ 宮本百合子 「働く婦人」
・・・七年には歴史的な血盟団の事件、五・一五事件もあり、日本には所謂非常時という空気が着々濃厚になって来た。それにつれて、ラジオ加入は増大し、「最初の百万に達するには七年十ヵ月を要したにかかわらず、次の百万増加には三年一ヵ月、更に次の百万増加には・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・に愬え「非常時の国民的良心」に愬え「新兵器としての婦人」を動員した戦争犯罪の支配者は、このようにして家庭から引離して集めた人々にどういう配慮をしただろう。次の実話は決して例外唯一の場合でなかった。 或る大規模の軍需工場で、八月十五日即日・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫